今一度ヨークへ。

この夏は、休み返上で仕事かと思われたリッチも、無事新しい仕事先が見つかり、現在、突然はじまったホリデーを満喫中である。
今週末は、リッチの親友の結婚式へ出席する予定。もともとあったその日程を繰り上げ、初秋のヨークへ二人で飛び出した。

なぜかしら。ヨークに行くとき、私の体調はいつも最低。今回はガストロインタライタス(Gatroenteritis)というお腹の風邪にかかってしまったらしく、朝から嘔吐を繰り返しながら街についた。そのため一日目は、ひとりホテルで寝込む。そのあいだリッチは、今週末結婚する予定の親友に会いに行ったりして別行動。


二日目の今朝は、なんとか復活した。昨晩行った Walk In Centre (病院)の先生にアドバイスをもらったとおり、沢山水分をとって、食事もなるべくしたのが良かったのか。わりと早く回復した。
朝一番にレンタカーを取りに行ったリッチ。今日は私がずっと行きたいと言っていた、念願の『ヨークシャー・スカルプチャー・パーク』に連れて行ってくれる。

ところが、というべきか、それとも考えてみれば当然のことだったのか。ここはヨークシャーデールにほど近い場所。予想を大いに上回って、自然が、はちきれんばかりの状態である。敷地に足を踏み出してそうそう、大量のうんちくん達がお出迎え。公園中にたっぷりと撒き散らされた、羊君たちの健康の賜物。その量に私は度肝を抜かされたのである(その点、田舎育ちのリッチは案外平気みたい)。
しかし。近代美術を見に、のほほんと都会から抜け出した格好、そのままの私たちに・・・これはあまりにもな歓迎ではないか。たまに通りがかる中年夫婦カップルは、むしろ美術を見に来たというよりは、登山をしにきたような格好でいる。ハイキングブーツを履き、杖をしっかりにぎって・・・。
たしかに。この公園を上から下へ鑑賞するのは容易ではない。敷地を突っ切ると、丘を2キロほど上がらなくてはならない。かなりの運動量を要するだろう。結局、準備不十分と判断した私たちは、全てのルートを敢行するに至らず、かなり最初のほうで断念。次の目的地へ向かうことにする。


ヨークシャーの田舎道をドライブしながら、ナーズバラという小さな街に行った。そこには、吊るすもの全てを石に変えてしまうという魔法の泉が存在するという。行ってみると、岩の上から滴る小さな滝のもとに、本当に帽子や手袋、はては誰が吊るしたのか、ロブスターまでが石になっている。ここにあるいくつものテディベアは全世界から送られてきたもので、この滝の名物になっているらしい。魔法の泉にはそのむかし、魔女疑惑のあった老婆が実際に住んでいたという。伝説は300年前から始まり、イギリス最古のアトラクションでもあるらしく、一帯に、なかなか異様な雰囲気を醸し出していた。


そして今、ハロゲートという古い街に滞在している。ほとんど夜に到着したわたしたちは、一番最初に見つけたホテルにチェック・インして、近くのレストランでゆっくりと食事をとり、夜の散歩へ出かけた。
ここの街並みは、なかなか古い建物が沢山あって素敵だ。ステンドグラス風のガラス窓や光の塔に、灯りがともってきらきらしている。これは・・・この雰囲気は何だか、大正ロマン。そういえば、大正時代というのは、欧米のいつの時代に影響されていたのだっけ。
イギリスの秋はもうかなり深まって、この時間になると外は随分寒い。薄めの毛糸のセーターとコートを羽織り、それをTシャツのうえに重ねて丁度良いくらいだ。
3年ぶりの運転で、やっぱり疲れた様子のリッチはもうぐっすり寝ている。
私はこれから、大好きな『ベティーズ』というお店で買った、ストロベリー・タルトをひとり頬張って、本でも読みながら眠りにつだったこうと思う。

本当に良い一日。