ある春の昼下がり

昨日、今日とロンドンは素晴らしいお天気で、大学の中庭には何十人もの生徒たちが、あちらこちらで地べたに座り込んでお話している。私も今日は、袖なしの服を着て、お昼はリッチとテート・ブリテンの前庭でサンドイッチを食べた。
青いビニール袋一杯にビールを入れて、行き交う人に言葉を投げかけながら、へべれけになっている中年のおじさん。大きな木下でピクニックをするおばあちゃんたち。芝生の上には、ビジネススーツのまま座り込んで話をする、若い男性の二人組みや、十数人もで固まってお昼休みをとる女性軍に囲まれて。あぁ彼女たちの一人が、すぐそこのアイスクリーム・バンまで、まとめてアイスキャンディーを買いに行くみたい。アイスいる人ー、って声をかけている。
こんな風のそよぐ良いお天気の日に。気ままにものを書ける幸福ったらない。行きがけにさっとぬった赤いマネキュアが、ちらりと目に入るだけで嬉しくなる。たぶん、今日のお天気にあってるんだ。
光が直射するものだから、暑くなったので場所を移動しようと立ち上がった私に、あのあとおじさんは、ずいぶん遠くのほうから こっちにおいで と手を振っていた。私はそれを知らんぷりしながら歩く。ごめんね、おじさん。片隅には桜が、雪のようにゆっくりと舞い上がっては落ちていく。
こうやって書き残しておきたいくらいなのだから、今の時間が、たぶん美しいのに違いない。今の時間は、たぶん特別美しいのに違いない。