生活とアート。空間。

　誰だって、素敵な生活を送りたいと思うだろう。私はとってもそう思うのね。素敵な生活を送りたい。素敵な場所で過ごしたい。素敵な空間に囲まれていたい。多分、空間って、素敵な生活をつくりだすための、とっても重要な要素なんじゃないかしら。

　わたし、場所という『空間』にとても惹かれている。箱の中の空間でも、大きな建築の空間でもなく、はたまた不動産物件の図面や広告でもなく（実家が不動産業で、昔働かせてもらってたので、もしかしたら自分の興味はここで触発されたのかもしれないけど）。日々の生活や、ふとしたときに訪れる場所。お店。ギャラリー。人並みに惹かれてるのか、人一倍惹かれてるのか。

　図面を描くとか、左脳を使って分析する能力は全く無いけど、色とか、置いてあるものの要素とか、再現したくなる。作りたくなる。場所を置き換えてみたり、入れ物を変えてみたり、触れたくなる。何よりも、そこにいたくなる。

　人の生活はますます進化していて、物質的に満たされた今、人は物質では満たしきれないものに目を向け始めたんじゃないかしら（在り来たりなことを言うようですけれども）。美術が、一部の人間だけではなく、広く一般の個人のライフ・スタイルに影響を与えつつある。生活の中に在るアートを、私は考えたい。作りたい。

　今まで、自分の理想の仕事は「カフェを作ること。自分の好きな空間を作り上げ、そこで過ごすこと」だとうっすら考えていた。でも、最近そうじゃないかも、何かまず考察抜きで「カフェは違うかも」と思う。カフェじゃない。何故か。

　だって理由が空間に対する興味だと気がついたからだ。自分の好きな空間で過ごしたい。働くのも、好きな空間で過ごしながら働きたい。インスピレーションを受けるような、与えることの出来るような場所に自分を置きたい。でもそれなら、どこに行っても自分の空間は作れるはずだし。

　多分カフェっていう場所は、あの当時のわたしが一番身近に、美しさや面白いビジュアルを体感できた場所だったんだな。くつろぐと言うよりは、洗練されたものやインテリアを実際に、お試しで身をおける場所。カフェに惹かれるのは全くの受身。そしてカフェを開くのなら、その場所を与える側になるということだ。

もちろん、美術を勉強している身ですから、ギャラリーやアーティストのStudioに、沢山素敵な場所があることは見てきたけど。アーティストになって自分のStudioを持つ。ギャラリーで働く。これともまた違う気がするんだな。もっと日常に近いもの。カフェやStudioだけじゃなく、まさにそれはオフィスでも、コンビニでも、タクシーの運転席でも同じことだ。でもタクシーの運転手になるのは無理だけど。

　何故、オフィスという空間は、ごちゃごちゃしたつまらないインテリアなのか。一般的にね。もちろん可愛いカフェやお洒落なレストランは沢山あって、そこでInspireされるのはありだ。それに一部のデザイン・オフィスや洗練された高級ショップもあるだろうけど、私が思うのは、人のライフ・スタイルが進化したのなら、何故オフィスでのスタイルも進化しないのか。オフィスだけじゃないけど、わたしたちは働く場所で日々の大半を過ごすんだし、その場所が一番重要なのではないかしら。人が一番長い時間を過ごす場所に興味がある。買い揃えるだけではなく、作っていく場所。

　大学で、ある友人に「あなたは自分の空間を作り上げるタイプだ」と指摘された。いわれるまでは気がつかなかったけど、私はその場所になじむには、人の作った場所、決まった場所で生活するより、自分の場所を作り上げないと我慢なら無いタイプだった。これは、精神的なはなしではなく、コトバそのまま、つまり物質的な場所のはなしです。敷居や囲いまでは作らずとも、壁一面にものを張ったり、DIYで妙な家具を作ってみたり、ミニ部屋を作ったり。そういえば高校の時の寮でも、自分の作った家具を飾ったな。机の前に写真などを飾ろうとして作った針金のオブジェクト。でも作ってすぐ、室長に部屋の調和を乱すとして撤去されちゃったけど。私の空間は、目に見にくい。自分でも気がつかなかったし、未だに良く分かってないくらいだ。無意識に自分の空間を作ってる。

　インターネットをぶらぶら検索していくと、私の望むようなこんな現象の端々が見えてくる。はっきりとコレって言い切れないけど、その端々が。日本でも、それは起こっていて、どきどきする。いや、むしろ。こういうライフ・スタイルに関する興味は、日本で生まれ育ったからこそ私の中に根付いているのかも知れない。日本ではいつまでたっても健康ブーム、健康に対する一般の興味が強いし、家事や上手な節約術を特集する主婦雑誌、生活をよくするための情報が沢山ある。それにも関わらず、なぜ美術のある生活に目が向かないのか。まぁ、まぁ、とにかく、だからこそ私はますます日本でのことに関しても、リサーチしていきたいんだな。

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