お土産

絵を購入した。カンタベリーからのお持ち帰りだ。画家さんのおじいちゃんは、とても面白い人だった。一度は買わないとふり切りながら、どうしても目が放せずに、後ろ歩きで遠のく。買えないのなら目に焼き付けておこうとしたのだった。そんなわたしを見かねたリッチが、「君は分かりやすいね、買っていこうよ」と言ってくれた。

嬉しかった・・・!多分、どんな名作が手に入るより、今まで見てきた展覧会の絵を購入できるよりも、ずっと嬉しかったと思う。なんでこんなに好きなのか。カンタベリーから、ずっと大切に手で持ち帰りながら考えていた。時折、道端の塀において眺めてみたり、電車の向かいの座席において眺めてみたりしながら。

帰り道、バスの窓辺において眺めていたとき。「そうだ、この絵のパターンは夏祭りの、あの水風船の模様にそっくりなんだ・・・!!」と思った。ちょっと泣きそうになった。自分では無意識のうちに、この絵を好きになった理由が、郷愁的なものだったので、ひどく驚いた。一番に大切なひとと一緒に居て、幸せな時間を過ごしながらも、わたしは気づかないまま日本が恋しいんだなぁ、と。

おじいちゃんがくれた絵の説明とは、本当に程遠くて、それはテクノロジーとかインターネットに関することだったのだけれど。絵を好きになるって、こういう経験もあるんだなぁ、と感慨深い出来事だった。

持ち合わせが無い分だけ、お金を借りるつもりで居て、返そうとしたとき「こんなに喜んでいるんだから、僕からのプレゼントにさせて」といってくれた。だから、初めて絵画をリッチにもらったことになる。

わたしは、今までお土産というものに関心を持ったことが無かったけれど。今回ばかりは、今までで一番大切なお土産をいただいたと思った。旅の出会いを持ち帰るというお土産。