D DAY

本当はポピー

 日本でも報道されていたかもしれないが、昨日の日曜日は「ディー・デー(D DAY)」という日で、第二次世界大戦のときに連合軍がノルマンディーに上陸を開始した、とっても歴史的な日だった。その60周年記念ということで、こちらでは一日中 D Day 関連のテレビ番組が流れていたり、特集が組まれたり、フランスでの式やヒーローのおじいちゃんたちがマーチしている様子が引っ切り無しに流れたりしていた。でももしかしたら、日本ではこんな大きな日も、何気ない国際ニュースの2分程度のエピソードで終わってしまったのかもしれない。やっぱり事の関わり方で、大衆的な興味も立場も変ってしまうんだなぁ。こうやって、人と人や、ものとものの「違い」はますます広がっていくのかもしれない。

  無知な私に、リッチは怒りもせず教えてくれる。簡単に言えばDデーとは、イギリス・アメリカを始めとする連合軍がフランスを、ドイツから取り返した攻撃の初上陸日ということだったらしい。それでも正直言って、私には直接的にはあまり関係がないという気がしてしまうDデー(ごめんなさい)。しかしこのDデーのために、実は回りでも小さな変化がいろいろと起こっていたことを、書き留めておきたい。

 まず最初に面白いと思ったのは、リッチから聞いた話。この数週間かこのDデーに向けて、イギリスの大衆紙「ミラー(Mirror)」は、毎日2面を丸々割いて、60年前のその日の新聞をそのまま掲載し続けていたということである。ミラーといえばこの間、偽造されたイギリス兵、イラク囚人虐待写真を載せたとして大問題になった新聞社であるが、実はこの新聞社、第二次世界大戦の時も報道をしていたということだ。ちなみにミラーは今回のイラク戦争に関しても、初めから戦争反対の姿勢で報道し続け、反戦デモにも協力するなど、反戦の核となった団体でもあった。その上のことだから、先の事件で読者は大変な失望を受けたことだと思う。私もとっても残念に思ったけれど、それはさておき、今回の試みを知って、実際に第二次世界大戦で報道していただけあっての反戦姿勢なのかなぁ、とも思った。記事はすごい興味深いとリッチは言っていた。少しだけど、当時の新聞を載せることで、本当に戦争があったという、リアルな問題を気づかせてくれるアクションだったんじゃないかしら。

 テレビでも色々戦争関連の番組が取り上げられている。何千、何万もの兵がパラシュートでノルマンディーに上陸した様子。ドイツ軍の目をを紛らわせるために、中にはダミー人形をつけてフェイクとして落とされたパラシュートもあったとか。軽率と取られるかも知れないけれど、私にとって、これはまるでアートのようにとんでもないインパクトだった。人が起こすパワーって本当に凄い。人は、とんでもなく凄いことを起こすんだなぁって。そんな凄いことも、時をおって忘れられていくし、また世界の反対側の日本のように、または若い世代のように、知られることすらない場合もある。それもアートのようだと思ったわけのひとつだ。

 他にも、番組の間のコマーシャルでは、すこし悲しい音楽と共に流れる「Battlefield Tour(バトルフィールド、戦場ツアー)」という旅行の宣伝があって、私は余りにも非日常的なツアーに目を疑ったけど、お年寄りが戦場で亡くなった友人を惜しんで行くツアーらしい。

 ノルマンディーの式に、オジイチャンと共に付いていった息子の手記。息子といっても私たちのお父さんくらいの年だろうな。今まで戦争のことは一言も話さなかったおじいちゃん。筆者である息子も、つらい過去だったのだろうし、別に聞きもしなかったそうだ。父が別に凄いとは思ったことはなかった、という息子。フランスについて、おじいちゃんと共に戦場になった村を歩く。すると、オジイチャンが通るたびに、気が付いた村の人々が立ち止まり、立ち止まっては、ありがとうございました、と挨拶をして来るそうだ。小学校を通りかかったときに、先生と子供たちが居て、おじいちゃんに気が付いた先生は子供たちに「姿勢を正しなさい、この人が私たちを助けてくれた人だよ」、と子供たちに話したという。中にはオジイチャンと同じ年くらいのフランス人のオジイチャンが赤い花を片手に近寄って、ありがとうと抱擁を交わすシーンもあったらしい。涙を流し続けるおじいちゃんを見て、父を尊敬することが一度も無かった息子は、このときにやっと自分の父が、実はヒーローだったということに気が付いたそうである。

朝日新聞の記事から
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200406060096.html