「押し売り」。迷惑です。

 昨日の夕方6時ごろ、背の低いアジア系の「自分はブリティッシュ・ガスのもの」と称する怪しい男が来た。男は、「ビル(支払い)を請求する宛名が違うから教えろ」とか「ガス・キーを見せろ」とか言う。英語は聞き取れるが、分かりにくく紛らわしい説明の仕方で、こちらを混乱させようとする。
 以前ブリックレーンに住んでいたときに、ブリティッシュ・ガスの人がメーター(ガス計)を測りにきていたこともあり、自分はそういった用事かと思った。今の家では、ガスのカードがあり、それをお店に持って行ってお金を入れる先払い式なので、その旨を伝えると、「新しいカードを送らなくては行けない」という。何かのシステムの変更にまつわるものかとこちらは思う。
 「ガス・キー・カードを見せろ」というので、カードを台所まで取りに行く。見せると相手は(やれやれ、外国人は。)という顔を浮かべて、「これじゃない。ガス・キー・ボックスを見せろ。」という。玄関の外にあるメーターの場所を示すと、「それじゃない、ガス・エレクトリシティ・キーだ。」という。この時点で随分混乱した私は、「ちょっと待て」と言い残し、台所まで電気用のカードを取りに行く。目を離したそのすきに、男は勝手に家の中に入ってきた。
 廊下に飾ってある絵などを見渡し、「これは友人のか。」「お前の名前は何だ。」「どこから来た。」などと馴れ馴れしく聞いてくる。「日本からだ」と応えると、ますます漬け込まれるし、金目のものがあると思われるので、念のため「韓国から」と応える(韓国人だし)。怪しい。目を離すと何を盗まれるか分からない。
 男は、随分近くに寄ってきて話し始めた。急いで離れて、「ビル(支払い)はすべてボーイ・フレンドのところへ来るから、私の名前は必要ないはずだ。」と一人身では無いことを強調する。すると、「イギリス人か」と少し顔が変わった。
 なにやら色んなフォームなどを出して、私の名前と住所を書こうとし始めた。この時点で「あなた、何しに来たの。意味わからないんですけど。」と言っても何もハキハキ応えないので、「ちょっと待って」と言って、リッチに電話する。

 早速リッチに代わってもらい、男はなにやら話しているが、だんだんリッチの声が大きくなり「お前は家の中に居るのか。何しているんだ。」という声が聞こえた。男はおどおどして、リッチに言われたとおり、ブリティッス・ガスのIDをさっと私に見せるが、リッチに「今すぐ家を出ろ」と言われ、玄関の方に歩き出す。電話を替わった私に、リッチは「今すぐドアを閉めて。」という。言われるまま何も言わずドアを閉めると、リッチが何があったか聞いてきたので、このように、起こったことを話した。
 リッチが話しても、男の言うことは、何一つ意味を成していなかったらしい。ガスカードを送らなくてはいけない、とか言うけれど何故かという説明が抜けているからだ。
 念のため、その後リッチは友人との一杯も切り上げて、急いで家に帰って来てくれた。

 今朝、ブリティッシュ・ガスと1時間以上もやり取りしたリッチ。彼が言うには、どうやら男は何かのガスのサービスを売りつけようとしていたようだ。勝手に住所を書き、サインだけさせる魂胆だったらしい。自分がイギリスで、押し売りに会うなんて、毛頭考えが無かった私は、お年寄りのようにひ弱だったのだ。しかし汚い。彼らの手口はこちらを混乱させて、こちらの言っていることがわからない、(このくそ外国人)といういらいらした表情を顔に浮かべて、さも何かの手順のようにフォームにサインをさせようとする。来た当初、この手でロイズ・クレジット・カードの入会に、はめられたことがあるが。

 私はイギリス人の彼が居てくれて、大事にもならず電話で何とかなったものの、家にまで入られて、ナイフなどで脅されたり何かあっても、誰にも助けを呼べないのだ。本当に恐い。

 リッチが帰ってくるまで、忍び歩きしたり、恐がっていると、リッチやママGが交互に電話してくれて、リッチは走ってまで帰ってきてくれた。

 ロンドンならずとも、海外で勉強している、多くの日本人学生の皆さん。こんなことに巻き込まれませんよう。