これはコメディースケッチに違いない、アザーズ地下鉄で満員ライブ。(5月24日)

一度告知を書いたページですが、再度、この日にあったアザーズの地下鉄ライブについて追記。

 今回のライブは伝説になりかねない。今までチューブ(地下鉄)でギグしたバンドなんて居ないのだから。そりゃそうだ。わたしはテッキリ、人気の少ないハマースミス駅構内の端かなんかでギグするもんだと思っていたが、なんと本当に電車に乗ってギグ決行。ハマースミス駅では、百人以上の興奮した若者たちが、一緒に電車に乗り込むという奇態な現象に、驚いた駅の人たちが、パニックに陥るというハプニングが。暴動かと思い、電車の発車拒否。それでも何とかギグは始まった。

 電車のど真ん中3両全部が、アザーズのファンで満員も満員。ぎゅうぎゅう詰めになった車両の一番前で揉みくちゃにされながら、拡声器を片手に声を振り絞るドム。ドラムキットを電車の椅子に広げて、力いっぱい叩きまくるドラム。残念ながらギターとベースは、ミニアンプが使い物にならず、ちっとも聞こえなかったけれど、ドムの声にあわせてファンが歌う叩く、ダイブする。*1車両内は熱気で、雲まで出来ていたそうだ。

 私とリッチは相変わらず、彼らを避けて反対側の車両で耳を澄ましていたけれど、これが笑えるのなんのって。駅に止まってドアが「ウィーン」と開くたんびに、ギグの音とファンの歓声が聞こえ、チューブが揺れる揺れる。そして閉まる。何事も無かったように。もう、まるでコメディスケッチ(コント)状態。私とリッチが、くすくす笑っていた席の前には、豆のようなオジイチャンも電車のゆれと共に、上へ下へ波打っている。かわいそうだけれど、駅で静かに電車を待っていた人たちは、もう腰が抜けるかと思うくらいビックリしていた。真昼間なのに、突然何故か満員電車が目の前に止まり、中では気違った若者たちが、奇声を上げて踊りくるっている。何がなんだか分からず、思わず走って逃げている人も。ここに来ると、もうむしろコントより「ドッキリ」ですね。中には、ドアの開いている数秒のうちに間髪いれずに入っていく勇敢な(そしてユーモアのある)ロンドナーも。私たちの車両に居た人たちも、みな興味津々で、リッチが何が起こっているか説明すると、大笑いして、次の駅で走って飛び込んでいくお兄さんも居た。

 ちなみに最初の駅で、この奇怪な現象を心配した駅員さんたちが警察を呼び、2,3件先の駅で警察官6人余りが、問題の車両前で待ち構えているというハプニングも。乗り込もうとしたところ、あまりの定員オーバーに押し込むこともできず、4両目のはしっこで、なんだか随分和やかに談話しつつ、一緒に同行することに。もちろん、めちゃくちゃ不法なことで、誰も掴まらなかったのは奇跡だと思う。警察官の人は、若者が問題を起こさないか見張っていたという印象。電車の中では、「ただいまこの電車では、バスカ*2(確かこんな感じの名前。あとでリッチに確認します。)が活動しています。どうか刺激、助長することはしないでください」という偶に流れるナレーションを、緊急対策として何度も流していた。テロやなんやで、色々ストレスの多いだろう駅員さんたちには、本当にかわいそうだけど、ロンドンはこんなことも受け入れるユーモアのある人が多いのかもしれない。やれやれ、という反応よりも、圧倒的に面白がっている人が多かったもの。

 ロンドンは日々「コメディ」。こんなことも、エキセントリック・ロンドンのひとこまなのかもしれない。これはもうスペクタキュラー。見に行って本当に良かった。今回は、どこぞのプレスの人も来て撮影していたので、私のレポートなんかよりズッと分かり易いレビューが、そのうち読めるかもしれません。

*1:「8○○(ギグに行けば、彼らの名前が分かります)」と、命名されたファンの一群は「ディ・アザーズ ダイブ部」。ステージに上がって毎回ダイブする子供たちは、サッカーフリークのドムの例えから名づけられた1郡の選手たち。彼らが電車の中でも、一杯になった人と、チューブの屋根の狭い間を、運ばれていく(ダイブなんですけど)姿は想像しただけでも「ぷっ」と笑ってしまう。若いって良いですね。

*2:ロンドンでよく見かける、電車を回ってお金を請う乞食の人たちや、音楽を勝手に弾き始めお金を請うひとたちのこと